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June 8th
2010

フォークランド沖での油田開発

カテゴリー: My Falklands, Weblog, フォークランドの産業

日本の新聞にも、フォークランド沖での油田開発も相まって、アルゼンチンとの緊張が高まっているという記事が、2月中旬に掲載された。これにより、現在フォークランド沖で油田開発がなされていることを知った方々も多いかも知れない。

Penguin News

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現在フォークランド諸島周辺海域で、油井の試掘を行っている開発会社は複数あり、その中で、一番最初の油井を掘ったのが、英国資本のDesire Petroleum社であった。同社は、同海域で開発を行っている他の数社と共同で、英国のDiamond Drilling社よりOcean Guardianという半潜水式石油採掘プラットフォームを借り受け、11月末に船に牽引される形でスコットランドを発った石油プラットフォームは、約3ヶ月弱をかけて西フォークランド島の北の沖合い100km地点の開発現場へ到着。そして2月下旬から早速最初の油井の試掘が始まった。

これはあまり知られていないかも知れないが、フォークランド海域での油田開発はこれが最初ではない。1998年にもShell、Hess、Lasmoといった巨大資本がこの地で試掘を行っている。この時も試掘の結果、埋蔵量は不明ながらもこの海域に石油があることが確認されたが、当時はオイル不況(1バーレル約$10)ということもあって、この隔絶した海域での採掘では採算が取れないと判断。そしてわずか1年で、フォークランド海域における石油開発は中止となったのであった。

そんなこともあったので、私としては、4年前にRockhopper Exploration社(フォークランドに生息するイワトビペンギン/Rockhopper Penguinに因んで命名)が誕生し、同海域での石油採掘への意欲を見せた時も、大規模な商業的採掘にまで至ることはまずないだろう、という気持ちでいた。
そしてその楽観的な見方は、Desire Petroleum社による最初の油井試掘が2月に始まってからも変わらなかった。
実際4月末に、この油井が、十分な量の石油埋蔵が見出せないという結果により試掘中止されるに至って、おそらくは今回の数社による試掘も、関係者が望むような結果が出ないまま、1年くらいで終わりを告げるに違いないと確信していた。

ところが・・・ところがである。Desire Petroleum社に続き、この同じ石油プラットフォームを使って、同じフォークランドの北の沖合いで油井の試掘を始めたRockhopper Exploration社が、5月6日に「ついに石油発掘!」という発表を行ったのである。
ネット購読している地元新聞「ペンギン・ニュース」を読んでそのニュースを知った私は、むさぼるようにして、ネット上で英国の新聞記事もチェックした。それらによれば、石油を掘り当てたRockhopper社の株価は150%以上に上昇し、同海域で試掘を行っているほかの開発会社の株も軒並み急上昇したという。
そして更に、5月下旬に、Rockhopper社が、「テスト採掘のオイルが良質のものと見られる」と発表すると、同社の株価は更に急上昇。発掘前37ペンスだったのが、今では2ポンドを超えているのである。この記事を書いている5月末時点での最新情報では、現在このテスト採掘オイルは、更なる詳細な分析のために英国本国へ輸送中ということである。

何よりも盛り上がっているのは、地元フォークランドである。

伝統産業であったウール産業が、ウール価格の暴落により斜陽となり、その後ブームを見ていたフォークランド海域での漁業権のセールスも、海洋環境の変化によるものか、この海域で漁獲高が大きく減っていることもあって、一時の勢いはなくなりつつあった。
そんなことで、今後の国の歳入や島の経済を憂慮する声が大きかったフォークランドに、1バーレル$80という好景気の石油産業への扉が開かれたのである。様々なインフラ整備や経済効果を期待して島民が盛り上がるのも無理からぬ話ではある。

しかし・・・しかしである。

恵まれた環境に暮らしてきたよそ者の私が、感傷だけでこんなことを物申すのは、長年隣国の脅威や本国への劣等感、将来への不安を持ち続けてきた島民らに対してフェアではないと思うが・・・

私としては、今回の石油発見のニュースを100%失望感を持って受け止めている。
理由はいうまでもなく、野生動物や海洋環境への悪影響に関する憂慮である。

勿論、この海域で開発行っている企業は、それなりに厳しい環境保全基準条件をクリアして、政府から認可を与えられたのであるし、政府も野生動物や海洋環境への影響をおろそかに考えているわけではないというのも重々承知している。

しかし・・・どんなに完璧な事故・オイル流出対策をとろうとも、油田や航行する石油タンカーがあるのとないのでは・・・天と地ほどの差があるのは言う間でもない。そもそも野生や環境に影響が全くない開発など、この世に存在するわけはないのである。

開発関係者らは、3,500箇所も油井がある北海油田で、事故らしい事故が起きていない事実を印籠として安全性を謳っているが、どんなに完璧な対策をとろうと、事故は起きる時は起きるものであることは、アラスカやつい先日の米メキシコ湾での事故で明らかであるし、また、タンカーによる海洋汚染はそれこそ地球の至るところで問題になっているわけである。

勿論、今回の石油開発はまだ始まったばかりで、今回成功を謳っている油井の商業的開発が本格的に始まるかどうかには、更なる調査を含む長いステップのクリアが必要になってくる。なので、まだあれこれと断定的に物を言う段階ではないかも知れないが、Rockhopper社としては、とりあえず試掘段階を経たら、同油井(SEA LION prospectと呼ばれている)でフローテストを行うまでは決定したようであるし、とにかく・・・ひたすら・・・ペンギンを初めとした海鳥たちの将来を憂慮するばかりである。

そして・・・これこそは、本当によそ者の勝手な感傷ではあるのだが、もし今後の更なる試掘や調査の結果次第で、石油産業がフォークランドで展開されることになったら、この国の経済的・社会的様相と基盤も、劇的に変わることであろう。
まるで英国の片田舎の村のように、平和でのんびりとした様相の首都スタンレーの姿も、一変してしまう時代が来るのだろうか・・・。

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コメント / トラックバック8件

  1. くみ より:

    どんな場所であろうと生活がある
    からなんともいえないですよね。でも
    なんとか石油に依存した消費社会から
    脱却できたらどんなにいいだろうって思い
    ますなぁ。。

  2. ラオマイ より:

    こんばんは。素敵なHP拝見させていただきました。

    石油発見で、野生動物や、環境が破壊されることを心配します。
    フォークランドが変わってしまわないことを心から願っています。

  3. れら より:

    こんばんは
    フォークランドのあたりに そんなお話があるのですね!
    最近 油漏れの大事故のため、 油まみれで動けない海鳥たちの映像を つらい気持ちで見ていました。
    環境もずいぶん破壊されているようですね。
    人間が 我が物顔で 地球を思い通りにしてもいいとは思えないのですが・・・ 

  4. 斎藤美香子 より:

    くみさん

    コメントありがとう!!
    くみさんのブログ見てると、くみさんって環境保全に対し、とっても意識高いよね。
    その辺にすご~く親近感感じちゃってるんだけど、そんなくみさんの言葉、なんか
    「ほんとそうだよな~」って心にしみちゃいました。ありがとう♪

  5. 斎藤美香子 より:

    ラオマイさん

    お忙しいのに早速来てくださったんですね。ありがとうございます♪

    ホントに…地元の人には悪いんですが、内心「もう次から掘る油田、全部失敗してくれ~」と
    思ってます。
    石油が出たら何もかも変わってしまうだろうな~と。
    100%の安全保障なんてないですものね。

    ラオスはまだ乱開発の嵐からは逃れられているのでしょうか。ミャンマーは随分国境地帯なども開発が進んでいるようですが。

  6. 斎藤美香子 より:

    れらさん

    こちらにもコメントありがとうございます♪
    最近の事故というと、あのアメリカのメキシコ湾の事故ですね。
    あれだって、安全性を謳ってたのに結局…ですものね。

    れらさんのおっしゃるように、ホントに地球は人類だけのものではないのですが…
    人間のために生息圏から追われたり、汚染の被害を受けたりして、苦しい立場になるのは、
    地球と共存して平和に暮らしている生物たちだというのは、本当に理不尽な話ですよね。

  7. 利権が絡むところに人間が群がって、いいことがあった験しがない気がします。--; 
    もう地球環境の汚染問題は一国の問題ではないのにねぇ・・・・。--;

  8. 斎藤美香子 より:

    シャンティcocoさんへ

    ホントですね・・・
    まあ地元の人々が期待する気持ちもわからないことはないのですが、海が、そして動物が汚染されてからでは、
    何事も遅すぎる(涙)

    とにかくどうなるのか、見守っていかねばと思ってます。

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  • 斎藤美香子: シャンティcocoさんへ cocoさん、おひさぁ~~(#^.^#)...
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