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September 26th
2010

フォークランドのペンギン草

カテゴリー: My Falklands, Weblog, フォークランドの自然

 

かつて人がフォークランドに入植する前、離島や海岸線を覆いつくしていた植物。それがタサック草です。


(タサック草の中で抱卵中のイワトビペンギン) 

このタサック草。18世紀に諸島に出入りするようになった船乗りたちに、「ペンギン草」という愛称で呼ばれていました。
強風吹き荒れ、塩分を含む波しぶき舞う厳しい環境に適していたタサック草は、この島で繁栄し、ここに生息する多くの生物に住処や餌場を与えてきました。

現在諸島で繁殖する62種の生物のうち、実に46種が住処や餌場としてこのタサックを利用しているといわれます。

多くは鳥類・昆虫類ですが、大型の生物、例えばゾウアザラシやオタリアなども、タサック草の中を住処としているものもいます。ペンギンではマゼランペンギンとイワトビペンギンが、タサック草の中によく巣を構えています。


(収まりよさそう:笑) 

この写真のように、死滅したタサック草の台座を、ちょうどよいベッド代わりに利用しているイワトビペンギンもよくいます。

 

この写真が、ペンギンの大きさと比べられてわかりやすいと思いますが、このタサック草、非常に大きく丈のある植物で、大きいものですと4メートルくらいの丈にもなり、2~3mほどの丈のものがよく見られます。

このタサック草、上の草の部分は10年ほどで1.5メートルほど成長しますが、下の台座の部分(写真でマゼランペンギンが立っている部分)は成長が遅く、台座が1mほどのものは、200歳以上の古いものだそうです。このマゼランペンギンの周辺にあるものも、200歳を超えているようですね。

 

入植前、離島や海岸線を覆いつくしていたタサック草ですが、18世紀にここが南氷洋でのクジラ漁や鯨油・アザラシ油・ペンギン油産業の基地として利用されるようになった頃から、どんどん姿を消していきました。

その原因は、古くは初期入植者が、ここでの食物を確保するために持ち込んだ豚などの家畜を野生下で繁殖させ、それらを捕まえやすくするために邪魔になるこの丈の長い草に火を放ったり、その後本格入植の時代になってから現代までは、羊などの放牧により家畜に食い尽くされてしまったことにあります。

そして現在では、タサック草の多くは、人間が入らない小さな無人島を中心とした離島に残るのみで、その数は入植前の5分の1以下になってしまったと言われます。

 

タサック草が少なくなると、大きな影響を受けるのが、ここを住処や餌場としている生物たちですが、その他にも、深刻な土壌の侵食が起き、人間の生活にも影響を与えるようになります。近年は、環境保護意識も高まり、タサック草を人工的に植える活動も活発化して、過放牧が行われていた羊産業のピークの時代に比べると、生息範囲は少しずつですが広がりつつあります。

 

ちょっと固い話が続いてしまいましたが、例えば私がよく行くニューアイランドでは、イワトビペンギンやマユグロアホウドリの大コロニーにたどり着くためには、このタサック草が深々と茂った場所を通って行かなければなりません。


(タサック草のない場所に見える夥しい数の白黒の物体は、イワトビペンギン・マユグロアホウドリ・ホオグロムナジロヒメウです) 

先に述べたように、このタサック草。草丈が3mもありますから、中に入ってしまうと、私のようなチビは、頭まですっぽりタサック草の中に紛れてしまうようになります。生えている場所は岩がちなところで、また、台座は大きくせり出して、近隣のタサック同士草や台座が複雑に絡み合って、油断すると足をひっかけて転んでしまったり、見えない岩に足をとられたりしてしまいます。

また、この中を進んでいると前が見えないので、タサック林の中に入る前に、遠くからしっかりルートを見定めたつもりでも、進む方向を見失ってしまって、思わぬ遠回りをしてしまったりします。

それでも、年々慣れてくるもので、初めて来た頃に比べれば大分スムースに歩けるようになりましたが、初めて来る人や取材班の皆さんなどは、大分苦労されるようです。

 

また、抱卵中、または巣に戻る途中のイワトビペンギンたちに、唐突にタサックの中で遭遇して、お互い大慌てとなることも多いので、彼らにストレスを与えないように、慎重に進む道を見定めねばなりません。

 

そしてもう1つ厄介なのが・・・

以前の記事で蚤や蚊に刺されやすい話を書きましたが、このタサック草の中にも蚤ダニのようなものが潜んでいて、それにもよく刺されるのです。
でも、日本の日常生活で、背丈よりも高い草の中を歩くことなど滅多にないので、面白い経験ではあります。

また、切り立った崖にも根付いているので、崖を下りる時など、滑落しないようこの草につかまることが出来るので便利です。
このタサック草は非常に丈夫で、全体重をかけても草がちぎれたり、根が抜けることもありません。

 

離島でも家畜を排除したり、放牧場所を限定したり、タサック草を植える活動が行われるなど、環境保護への関心も高まっています。

かつてのように深々とタサック草が生い茂る本来の姿が、ある程度回復されれば、と願うばかりです。


(この写真の左部のタサックの境目を見ると、これらが人工的に植えられたものであることがわかります)


(タサックのない土壌は酷い侵食が起きているのがわかります)

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コメント / トラックバック18件

  1. トム より:

    TABIさん・・・ホントいろんな事ご存じなんですね(*^_^*)
    1度、水族館&動物園ではないところでペンギン見てみたいな~♪
    タサックの中を歩くって、凄く楽しそうです(笑)

  2. にゃり より:

    おひさしぶりです!
    ご無沙汰しておりましたが、やっとブログ復帰いたしました…。
    TABIさんお元気でしたか?
    そうそう、このタサック草、前の記事のときから気になってました。
    タサック草のない部分をペンギンたちが埋め尽くす写真、すごいですね!はじめて見る光景です!
    草の上で居心地よさそうなペンギンさんもめちゃめちゃかわいい☆
    あの、どうでもいいですが、うちの猫たちも黒白なので、まるまってる姿とか見ると、結構似てるかも…(笑)

  3. くみ より:

    へぇ~タッサク草!
    タッサクの中はドキドキですね。
    TABIさんの話って本当に面白い。
    収まりよさそうに寝てるペンギンがかわいい( ´艸`)

  4. 4m・・・なんて高いベッドなんでしょう。
    登るだけでも大変そうですね。^^;
    草が岩の侵食を防ぐんですね~。自然ってよくできてますね~。

    この草、先っぽがかなり鋭そうに見えますが、
    この草の林の中に入るとき、ゴーグルなどつけなくて大丈夫なのでしょうか。
    風が吹いたら、まわり中剣がビュンビュン飛んで来るような状態にならないのだろうか・・・などと、びびる私でした。^^;

  5. 斎藤美香子 より:

    トムさんへ

    いや・・・この年齢ならもっと物を知ってていいはず(大汗)。己の無知さを実感する日々です。

    トムさんも是非野生ペンギンの旅へ!!荷物持ちなら四国から派遣しますぞ~( ̄▽+ ̄*)

  6. 斎藤美香子 より:

    にゃりさんへ

    ご無沙汰してました~♪
    猫兄弟ちゃんたちもお元気なようで安心しました。

    白黒・・・そうなんですよ。
    私も白黒の猫と暮らしてましたが、よくペンギン(特に小型のイワトビペンギン)の姿とダブってしまって、「シヨ~☆」なんて呼びかけてみたりすることあります。

    タサック草はイネ科の植物みたいです。

  7. 斎藤美香子 より:

    くみさんへ

    タサック草の中に入ると、ホントに方向感覚わからなくなるんですよ。
    密集して歩けないところもたくさんあるので、そういうところをよけて行くのでなおさら・・・

    くみさんは好奇心強そうだから、こういう迷路みたいなとことか楽しんでしまいそうですね(*^o^*)

  8. 斎藤美香子 より:

    シャンティcocoさんへ

    高いベッド・・・死滅してもう上に伸びないタサックの、高さ1mほどの台座の部分で寝てるんですよ(*^o^*)

    島はピート質の土壌のところが多いんですが、目の細かいさらさらした砂地みたいなところもあるんです。そういうところは植物が根を張ってないと、どんどん雨や風で土壌が流されちゃって、酷いところは歩くのもままならなくなっちゃうんです。

    ゴーグル・・・おお!!さすがcocoさん!!いい所を突きますねえ~♪
    そうなんです。目とか危ないので、サングラスとかは必須なんですよ。それと、肌をむき出しにしてると、肌を傷つけたり刺されたりするので、服装も気をすかいますぅ~。

  9. リリス より:

    こんばんは!TABIさん。

    背丈よりも高い草むらの中を縦走するのってドキドキですよね。
    ペンギンさんたちにタサックの中で遭遇した時の互いの慌てぶりが目に浮かぶようです(笑)

    あの収まり心地の良さそうなベットとても素敵です(笑)
    タサック草・・・初めて知りました。自然ってすごい!!

  10. 斎藤美香子 より:

    リリスさんへ

    こんばんは!リリスさん!!
    最近インド最新情報をこまめに更新してくださるので、毎回楽しみにしています。
    あの暗~い空港があんなに立派になっちゃったんですねえ~~。

    タサックの深い所は、ホントに先が全く見えないし、足元も見えないことがあるので、ペンギン踏んだりしないように(爆)、結構気を遣います。ベッドは、ホントに中央がくぼんで、やわらかくて寝心地よさそうなんですよ(笑)。

  11. マツケン より:

    自然のバランスが取れている中に家畜が入り込み、また、開発が進んで破壊されていく、ここでもそんな姿が有るのですね。
    それを復活させるのに大変な時間と労力が必要とされて、う~ん、考えさせられますね。
    表土流出は陸上部だけでなく、海中にも大きな影響があると思います。
    タサック草、ペンギンにもフォークランドにも大切な植物なのだと、初めて知りました。さすが憧憬が深い。

    それにしてもペンギン達、よくこんな丘の上まで上がって来るなぁ。

  12. ずんこ より:

    ほんとTABIさんの記事は勉強になります。
    やっぱり世の中は絶妙なバランスで成り立っているのですね
    それがちょっとでも崩れると色々なことがおかしくなってくるんだなぁ
    崩れる前にわかれば本当はいいのだけど、やっぱりそうなってみないと問題に気づけなかったりするのだろうなぁ。

    なんか、この腹ばいに寝ているペンギン達・・
    この収まりよさそうなペンギンなんか特に・・
    猫が香箱座りしているみたい・・笑

  13. 斎藤美香子 より:

    マツケンさんへ

    さすが農業の専門家!確かに表土流出って海洋環境にも大きな影響ありますね。それは考えなかった!!教えてくださってありがとうございます。

    タサック草・・・イネ科の植物らしいです。波しぶきの塩分で植物が淘汰される中で、どんどん勢力をのばした植物だそうです。

    そうなんですよ。イワトビペンギンは、ホントに驚くような急斜面をしかもかなり長距離登ってくるんです。今度はその関係の記事を書いてみようかなo(^▽^)o

  14. 斎藤美香子 より:

    ずんこさんへ

    いやいや、自分の好きな場所しかよく知りません。ずんこさんの方がずっといろいろな場所のこと知ってますよo(^▽^)o

    ずんこさんの言うとおりですね・・・絶妙なバランス・・・崩れる前にはなかなか気付けないのでしょうね。
    でもそろそろ散散気付いてきたわけですから、本腰入れていろんなこと修正していかないとという時期ですよね。

    私もずんこさんと同じで、腹ばいで寝ているペンギンの姿に、猫の姿を重ね合わせてしまいます(爆)。
    イワトビペンギンなんか、特に大きさ的にもちょうど猫っぽくて、癒されます(*^o^*) 

  15. Uk より:

    200歳を超える草があるなんて、驚きです。江戸時代の頃から生えてるってことですよね。
    日本にも、江戸時代から今まで生きてるらしい人が沢山居たようですが・・・。(´∀`)
    気の遠くなるような年月を掛けて形成されてきた自然も、人の手に掛かってしまうと、
    あっという間に消えて行ってしまうんですよね。ここを読んでいると、いつも考えさせられます。

    しかしペンギンの多さには改めてビックリしました。4枚目の写真、一見したところでは、
    岩肌が見えてるだけなのだと思っていました。(笑

  16. 斎藤美香子 より:

    Ukさんへ

    そうですね。200歳って、ちゃんと考えると途方もない時間だな~と思います。何でも作るのは大変だけど、壊すのは簡単なんですよね(汗)。

    ペンギンたくさんいますよ~。
    岩肌が出てるのは、ペンギンやウミウなどの排泄物が植生を枯らしたり、植物を巣材に使ったり、踏み潰したりして、植生がなくなってしまったからなのです。
    一般的にペンギンというと寒いところや氷の上にいるというイメージがあるようで、こんな山の斜面の写真を見せると、驚く方も多いです。

  17. ゆみ より:

    TABIさん、お久しぶりです(*- -)(*_ _)ペコリ
    タサック草のこととてもお勉強になりました♪
    今日タサック草を植えても、もとのようなるまでに200年以上かかるということですものね!
    簡単に自然のバランスを崩してはいけないんですよね゚.+:。(‘-’*)(,_,*)(‘-’*)(,_,*)゚.+:。 ウンウン

    お写真を拝見したときタサック草の生えてないところにたくさんいるイワトビペンギンさんたちの群れに放り込まれたい衝動にかられましたが、ペンギンさんたちを脅かしてはいけませんね^^

  18. 斎藤美香子 より:

    ゆみさんへ

    お久しぶりです。急に冷え込んできましたが、体調崩されたりしてませんか?
    タサック草、そうですね。元のようになるには時間がかかるけど、生物に住処を与えられるくらいには何年かでなれるので、どんどん人工的に植えていければいいなあと思います。

    タサックの中のイワトビ、可愛いですよね★

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  • 斎藤美香子: シャンティcocoさんへ cocoさん、おひさぁ~~(#^.^#)...
  • シャンティcoco: ふぅ。やっとここに入れた・・・ と思ったら、...
  • 斎藤美香子: ようめさんへ ようめさん、コメントありがとう~~(#^....
  • 斎藤美香子: ダニーへ コメントありがとう。年末風邪ひいた時にビタミ...
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