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June 30th
2011

アホウドリがペンギンのヒナを育てる!?

カテゴリー: My Falklands, Weblog, マユグロアホウドリ

 

今日は、先日まで書いてきた、昨シーズンのフォークランドでの事件の結末を書こうと思ったのですが、その前に同じフォークランドネタを1つ。

このところ、フォークランドについて、あまり真面目な情報を発信していなかったので、今日は、日本の鳥類或いはペンギン研究者の方々も、間違いなく興味を持つであろう真面目な話題を書きます。

 

3.11で実家が被災して以来、フォークランドの情報などをチェックする余裕もなく、すっかり最新情報から取り残された感があった私でしたが、このところ暇を見つけては、情報をチェックしていました。

すると、私の数年来の友人である研究者で、特にミナミイワトビペンギンの研究に力を入れている、フランス人鳥類研究者が、鳥類学ジャーナルに寄稿したあるレポートに目が留まりました。

 

「どえ~~~、うそでしょ~~~!!聞いてないよぉ~~!!」

 

びっくり仰天のその内容。

彼女(そのレポートを発表した研究者)には昨シーズンもフォークランドで会ったのに、何も言ってなかったじゃん!!というか、それっぽい話題が出なきゃ、彼女もそんな話をしないか・・・。

昨シーズン彼女に会った時は、初めて会う彼女の1歳になる赤ちゃんのことで盛り上がってしまって、あまり彼女の研究成果の話も、時間がなくてしなかったのでした。

 

そしてそのびっくり仰天の内容とは・・・

 

マユグロアホウドリによる、ミナミイワトビペンギンヒナのadoptionの話。

adoption・・・この場合なんと訳すのがベストか・・・日本語語彙の乏しい私は適訳が見つからないのですが、adoptionの意味は「養子縁組」とかそんな意味で、つまり、アホウドリがペンギンのヒナを自分の子供として受け入れたみたいなことですね。

 

このレポートを読んで、すぐに彼女にスカイプ電話をかけました。

で、挨拶もそこそこに、「マユグロがイワトビのヒナをadoptしたって本当!?え~~詳細聞かせて~~!!」とお願い。

「あれ?この話、前に会った時教えなかったっけ?」

「おしえてもらってないよ~~。だからレポート読んでびっくりしたんだよ~~」

ということでいろいろスカイプで話したのですが、ホントにびっくりしましたねえ・・・。

 

あまりご存じない方々のために説明しますと、マユグロアホウドリ、ミナミイワトビペンギンとも、フォークランドに多く生息する生き物で、とくにマユグロに関しては、世界全体の個体数の約60%が、フォークランドに生息しています。

マユグロ、イワトビとも主にフォークランドの離島の岩がちの崖や傾斜地に繁殖地を構えるのですが、多くの場所で、マユグロ、イワトビ、そしてもう一種ホオグロムナジロヒメウというウミウの仲間の3種が混合で大繁殖地を形成しています。


 (3種が混じった大繁殖地)


 (同。結構な密度です)

勿論マユグロ、イワトビ、ヒメウ、それぞれ単独の繁殖地を形成することもあるのですが、大型の繁殖地では大抵この3種が混じっています。

 

マユグロアホウドリは毎年繁殖期に1つの卵を産みます。ヒナも親とほぼ同じ大きさに成長し、大きくなってからも給餌期間の長いマユグロは、1羽育てあげるのでも大変です。


 (マユグロアホウドリ。泥や草を固めた巣の中で子育てします)

ところが、私が最初にフォークランドを訪れた9年前、珍しいマユグロを見ました。


 (1組の両親がこの2羽を育てていました) 

それは、ヒナを2羽育てているマユグロのペア。私が見た時期にはこのくらいの大きさまで成長していましたが、食欲旺盛なヒナをここまで2羽も育て上げるとは!!とびっくりしました。

何より、マユグロが自分のヒナ以外に、もう一羽他のヒナを受け入れるというのにも驚きました。このもう一羽のヒナが卵の段階でなんらかの理由で親が自分の巣に受け入れたのか、或いは孵化してからなんらかの理由で受け入れたのかは不明でしたが、とにかくこれだけでも、相当珍しいことですので、当時は地元新聞にも載るくらいのニュースになりました。

 

でも・・・アホウドリとペンギンという異種間で、ヒナの受け入れが起きるとは・・・。本当に驚きました。

 

私はフォークランドでマユグロの研究をしている複数の研究者と懇意にしているので、いろいろ話を聞くのですが、彼らの話では、マユグロの、特に子育てにまだなれていない若い両親の場合、孵化し、中くらいのサイズになったヒナを、よその巣のヒナと交換しても、気づかない場合がほとんどだそうです。

 

一方、イワトビペンギンの場合、孵化前、つまり卵の段階で交換しても、その孵化した子供を自分の子供として育てあげますが、一旦孵化して以降は、自分のヒナ以外に給餌することは絶対にないといわれます。これは、イワトビが自分のヒナを鳴き声で識別しているためです。

 

孵化前の卵の段階では、卵をなんらかの事情で失った親鳥が、近くの巣の卵を盗んだりすることはよくあるようですが、一旦孵化してヒナになってからは、親鳥は容赦なく自分のヒナ以外のヒナの侵入を拒み、つついたり、相当のいじめを加えたりします。


 (どこからか拝借した卵を含め、3つの卵を抱卵するイワトビ) 

一方ヒナの方は、親の警護期が終わってある程度の大きさに成長すると、雛同士が集まってクレイシという集団を形成します。そうすると、両親とも海に採餌に行くので、昼間はヒナだけになります。親鳥たちが戻ってくる夕方などには、近くにいる自分の両親以外の成鳥に餌をねだったりするヒナもいるのですが、親鳥は声で判別し、自分のヒナ以外のヒナに給餌をすることは絶対にありません。

 
 (クレイシ後期。ここはイワトビ単独の繁殖地)

と、あまりご存じない方々のために簡単に彼らの生態を説明しまして、再び本題に戻りますが・・・

 

マユグロがイワトビのヒナを受け入れて給餌!!

 

これは本当に驚きました。レポート、及び彼女の話によれば、生後20日前後と思われる大きさのイワトビのヒナが、生後5~7日ほどのマユグロのヒナとともに、巣の中で、親鳥に抱かれていたのだそうです。生後20日くらいのイワトビのヒナですと、かなり活発に餌をねだりますが、親鳥のうちオス親の方はねだられても自分のヒナ(マユグロ)にしか給餌しなかったようなのですが、メス親の方は、彼女が観察していただけでも、丸2日間に渡って1日複数回の給餌をイワトビのヒナに行っていたそうです。

 

彼女のメインの研究は、他にいくつもあったので、連日観察は出来なかったようでしたが、その1週間後くらいに再び行ってみた時には、巣の中には平均体重の10分の1ほどの大きさの小さなマユグロのヒナが弱っていてまもなく絶命したそうです。これは明らかに活発に餌をねだるイワトビのヒナに生存競争で負けたためと思われますが、そのイワトビのヒナもいなくなっていたので、その後どうしたのかは不明だそうです。

 

フォークランドでは、マユグロの食べ物と、イワトビの食べ物はかなりオーバーラップしているので、給餌にも問題はなかったのでしょうが、アホウドリがペンギンに給餌とは・・・本当に驚くべき話です。

 

マユグロがイワトビに給餌する写真もあるのですが、コピーライトもありますので、ここには掲載しませんが、その写真を見るとホントにびっくりします。

 

というわけで、今日は久しぶりにフォークランドの真面目な情報を発信してみました(笑)。

 

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コメント / トラックバック6件

  1. トム より:

    この記事は・・・・・・・・・・・(p_-)

    私に腹を括らせる為に、
    鳥の写真オンパレードで更新したわね(涙)

    +++++

    まだ行ったことないところだったから、
    ついあの夜(いつの夜??爆)に簡単に申込みしちゃったけど・・・
    フォークランドにはペンギンしかいないと思っていたのよ((+_+))

    でも鳥が向かってさえこなければ大丈夫よ!!
    一番ダメなのは鳩なんです。。。
    インコもダメかも。。。
    あ、全部ダメかも。。。

    ご飯さえ食べられれば何とかなるわ~♪
    (=^・^=)ノ

  2. 斎藤美香子 より:

    トムさんへ

    トムさん・・・アホウドリは向こうにいる鳥の中でも、すっごく可愛い鳥よ。
    他にたくさん恐い顔した鳥たくさんいまっせ(汗)。
    あ、向かってくる鳥もいるわよ。トウゾクカモメ(爆)
    トウゾクカモメに襲われるトムさんを激写するわっ。フフフ・・・

  3. アホウドリとペンギン・・・・異種間の間にどんなドラマがあったのかしら・・・。「育てられないから、どーぞこの子をお願いします・・・。」なんて、そっとアホウドリの巣に自分の卵を泣く泣く置いてくるペンギンがいるってことか。--; チガウカ 

  4. 斎藤美香子 より:

    シャンティcocoさんへ

    キャハハ・・・「泣く泣く」という場面を想像したら、何か笑えた(爆)

    そうよね~。人間はそういう事に対し、科学的な根拠とか理由を探そうとするけど、実は実はcocoさんが言うような、そういう科学的根拠じゃないドラマがあったりしてね(笑)

  5. マロ より:

    こんにちは。
    フォークランド諸島について検索してたら、こちらにたどり着きました。
    実は私は今年の年末くらいには、フォークランドに引っ越し予定でして、それでいろいろと情報を集めてるとこです。
    ここでペンギン達のことを読んでると、早く間近で見たい!!と楽しみになって来ました。
    本当は悲観的になってたのですが、なかなか行けないような島だし、思いっきり楽しんきたいです。

    またいろいろとフォークランド諸島&ペンギン情報おしえてください。

  6. 斎藤美香子 より:

    マロさんへ

    コメントありがとうございます。
    おお!驚きました。フォークランドお引越しとは!!
    でも「悲観的」とあったので、マロさんの意図しないところでのお引越しなのでしょうか?
    とすると、漁業関係者や研究者、もしくはそのご家族とかでしょうか?

    以前はフォークランドにも、日本の漁業関係の会社の出張所などもありましたが、今はなくなってますけど、もしやまた出来るのかな?

    もし差し支えなければ、是非ともこのサイトのコンタクトからメッセージなど頂ければ幸いです。今年は私も年末から現地へ参りますし、また、今後も参りますので。

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  • 斎藤美香子: シャンティcocoさんへ cocoさん、おひさぁ~~(#^.^#)...
  • シャンティcoco: ふぅ。やっとここに入れた・・・ と思ったら、...
  • 斎藤美香子: ようめさんへ ようめさん、コメントありがとう~~(#^....
  • 斎藤美香子: ダニーへ コメントありがとう。年末風邪ひいた時にビタミ...
  • ダニー: (=^・・^=) 向こうに住んでて、こちらにはたまに仕事で来るんでし ょ?...

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