また久しぶりの更新になってしまいました(大汗)。
今年の4月以来、ギャラリーの写真を全く更新していなかったのですが、この度漸く更新しました。
更新したのは主に、知床で定期的に観察しているシマフクロウ一家の写真、シャチやエゾフクロウの写真です。
コロナ前の2020年3月にフォークランドに行って以来、海外には仕事でもプライベートでもまだ行っていないので、国内で撮った写真のみの更新です。
本当はこの10月にプライベートでフォークランド行を計画していたのですが、100歳近くになる祖母の体調が余り良くないので、取りやめることにしたのです。
海外取材が再開されるのも、来年度からになりそうですので、暫くは長期観察してきたペンギンや各種海鳥等の海外の野生動物に出会うことはかないませんが、今のところは、久しぶりの海外での野生動物観察は、ラッコやアザラシの赤ちゃんが多数誕生する春のタイミングでのアメリカを考えています。
ただ、昨今の燃油高騰やコロナ禍等による国際航空券の大幅な値上がり、急激な円安により、今後は海外旅行が一気に遠い存在になるのは間違いないでしょう。
バブル期のドキュメンタリー等の海外取材の黄金時代を含め、長らく海外取材に携わることが出来たこと、そして円高の恩恵により、プライベートでも極地方を含めた世界各地の辺境地域に数多く足を運ぶことが出来たことは、本当に幸運だったと実感しています。
元々服飾や贅沢品等、飲み会やグルメ等の遊興などには全く興味がなく、限られたお金はほぼ旅に費やす、というライフスタイルでしたが、やはり行ける時に無理してでも高齢になってからでは体力的にも難しい世界の辺境地に足を運んでいたのは正解だったな、と思います。
健康状態や加齢により、こういう辺境地に行けなくなることはあるとは思っていましたが、世界的なパンデミックや、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した世界情勢の不安定化や原油価格高騰、極端な円安により、海外が大きく遠のく時代が来るとは思いませんでした。
何事もそうですが、やはりやれるうちに、行けるうちに、という思いを強くしてる今日この頃です。
]]>また久しぶりの更新になってしまいました(大汗)
今回は2つのお知らせがあります。
私が翻訳にあたりました、日本山岳会創立110周年記念書籍「インド・ヒマラヤ」の英語版が、先月国際出版されました。
700ページの翻訳という大作……業務の合間に翻訳を続け2年以上前に翻訳そのものは終了していたのですが、コロナ禍により、海外の関係者による内容検証その他の作業が遅れ、予定より2年ほど遅れての出版となりました。
こうして厚みのあるどっしりとした本を手にすると、感慨深いものがあります。
初めて700ページ余りの日本語の原本を手にした時は、途方もない作業のように感じ、気が遠くなるような思いでしたが、出張や業務の合間にコツコツと翻訳を進め、残量が日々少なくなって先が見えてくると、1年以上もの時間をかけてコツコツ続けて来れた事が大きな自信に変わってきたことを、懐かしく思い返しています。
2つ目は、7月16日発売のBIRDER(バーダー)8月号への写真掲載のお知らせです。掲載記事は、NHK「ダーウィンが来た!」や「ワイルドライフ」でよく一緒に仕事をするディレクターが執筆したフォークランドのペンギンのものです。
こちらに私が撮影したフォークランドのペンギンの写真6枚が掲載されます。
8月号はペンギン特集とのことなので、是非ご覧ください
]]>さて、今回は現地で急遽15人分のパーティ料理を作らなくてはならなくなり、焦りまくった料理人のお話。
これまで書いてきたように、我々がテレビ取材で訪れる離島には商店も畑もなく、電力も風力発電で限られるため、冷蔵庫もごく小型のものしか使えず、食材の殆どは、長期常温保存出来る食材で賄うしかありません。亜南極料理人としては、食材使用計画と献立は綿密にたて、途中で食料がなくなるようなことがないようにすることが使命となります。
この島の住民は島の管理人2人のみなのですが、フォークランド諸島内でも屈指の野生動物天国であるこの島には、夏季の間ペンギンや各種海鳥の調査研究のために、世界中から研究者たちがやってきます。
長期研究者が殆どなので、ほぼ毎年この島を訪れる私にとっては、その8割の研究者は顔なじみのメンバーたち。例年だと研究者はせいぜい4~5人なのですが、この年は非常に多く10人。島はいつになく賑やかでした。
取材班や研究者が研究棟で歓談していたある日、ディレクターが皆の前で突然、「今度『ジャパン・ナイト』を開催しよう。是非皆に日本食を楽しんでほしい。」と言い出しました。どうやら話題が日本食の話になり、そんな展開になったようでしたが、私としては目がテン(@_@)
やんわりと「いや~、食材が豊富にあればやりたいんだけどね~( ̄∇ ̄;)ハッハッハ」くらいで私がごまかそうとする間もなく、盛り上がる皆。
今更出来ないなんて言えない雰囲気の中で、笑顔を作りつつ、心の中でディレクターを恨めしく思う料理人(--〆)
普段から料理をする方々であれば、15人分のパーティ料理を作るのがいかに大変で、いかに大量の食材を使うか想像できると思います。
それを、1か月半×3人分の生鮮食品がビジホサイズの小型冷蔵庫2つ分しかなく、電子レンジやフードプロセッサー等はおろか、限られた調理器具しかない中で15人分を調理!?
しかも皆の出身国はイギリス・フランス・ポルトガル・ドイツ・イタリア・フォークランドと多岐にわたり、しかもそのうち2人はヴィーガン(厳格な菜食主義者)。常温保存の食材もほぼ乾燥・缶詰・インスタント食材で、野菜も長期保存のきくじゃがいも・玉ねぎ以外は、日本から持ってきた切り干し大根やネギなどの乾燥野菜しかない状況。それで皆が抵抗なく食べられるような日本食を作らなくてはいけないというのはかなりのプレッシャー(大汗)
結局どうなったかと言えば・・・
日々の仕事や撮影の合間に食料使用計画と献立を見直し、何とかパーティに使える食材をねん出し、その食材を使ってヴィーガン2人を含む多国籍ゲストが抵抗なく食べられる日本料理を考える日々が続きました。
そして当日。
「今夜はパーティがあるから撮影は午後から休んでいいよぉ~」
と涼し気に語るディレクター。
15人分の料理を作るのは、ホントにホントに大変でした。結局作ったのは、
・ちらし寿司(錦糸卵・海苔・桜でんぶ・乾燥シイタケとにんじんを煮つけた具)
・鶏唐揚げ
・親子丼(鶏少な目、玉ねぎ多め)
・やきそば(インスタント麺に玉ねぎや乾燥野菜を入れたもの)
・ポテトサラダ
・わかめの味噌汁
限られた食材で作れるもので、日本食になじみがない多国籍メンバーでも無難に食べられそうなもの、ということで必死に考えたメニューはこれでした。
幸い、皆喜んで食べてくれ、お皿も空になりました。
今振り返ればよい経験にはなりましたが、当時はホントに大変でした(大汗)。
でも、コロナ禍で人との触れ合いや海外の仲間との交流も難しくなっている今は、ビールを回し飲みして1つの大皿をつつきながら大いに盛り上がったこのような思い出は、より一層懐かしく感じます。
気まずそうな顔をして私の部屋にやってきたAさん。
「実は・・・こっそりマイクのウイスキーを飲んでしまったんです。」
「えっ!?どういうことですか!?」
「お酒がなくなって・・・どうにも我慢できなくて、最初美香子さんが料理に使ってる料理酒を飲んでみたんですが、塩っ辛くてまずくて・・・あれを飲んだら益々お酒が欲しくなって・・・つい・・・」
「えー!まさか、ひと瓶飲みほした、とかじゃないですよね!?」
「いや、そこまでは(笑)。多分(深さ)5㎝・・・いや10㎝分くらいかな」
「いやいや、5㎝か10㎝かによって、私の対応も変わってくるので、そこは正確に」
「・・・10㎝・・・かな」
「10㎝って・・・かなり本格的に飲んじゃったんですね(大汗)」
マイク・・・それは私たちと同時期に島で取材をしていたナショジオのカメラマンでした。
ナショジオの取材班やカメラマンとは、私も同じ取材地で何度か一緒に取材をしたことがあるのですが、結構曲者が多いのです。そんな曲者のお酒を日本隊が飲んだ、ということになったらどんなに大変なことになったろうか、と想像して、一瞬身震いしてしまいました。
でも、幸いなことにマイクは紳士なナイスガイ。それでも、彼も持ち込み荷物やお酒は最小限にしているはずで、貴重なお酒を飲まれたとあっては果たして心穏やかにいられるか・・・
「とりあえず、一緒にマイクのとこに行って、正直に話をして謝りましょう」と、炊飯器に残ったご飯でおにぎりをちゃちゃっと作り、Aさんを連れてマイクの部屋に行きました。
「マイク、これ差し入れ・・・それから、マイクに謝らなければいけないことがあるんだけど」
怪訝な顔で私たち2人を見るマイクに、Aさんがマイクのウイスキーを大分拝借してしまったことを伝えると、一瞬のうちに相好を崩して笑いだすマイク。
「いや、なんかね、ウイスキーが減ってる気がしたんだけど、酔っぱらってて気づかなかっただけなのかな~、とか思ってて。まさかAが、とは思わなかったよ」
笑い出したマイクに、堅い表情だったAさんもほっとしたのか、片言の英語で「お詫びになんでもするよ」と言うAさん。
「じゃ・・・そうだね・・・明日海岸に行く時に僕の三脚運んでくれたら帳消しってことで」
うわ~、やっぱり悔しいくらいナイスガイなマイク!
名刺をもらったり、今後も連絡を取り合おうと約束して別れたナショジオ関係者は何人もいたけれど、結局疎遠になってしまったパターンがほとんどな中で、マイクはその後も時々連絡を取り合う友人になったのでした。
チャンチャン。
ということでこの話は終わりにして、次回はまた別の話を。
皆さんは手料理で大人数をもてなした経験はありますか?
私は日本ではせいぜい4~5人分までの料理しか作ったことがありません。
1か月半×取材班4人分の生鮮食品を、ビジホ小型冷蔵庫に2つ分しか持っていない私が、ある時、突然に15人分のパーティー料理を作らなくてはいけなくなってしまいました。
次回はこのお話を。
]]>堺雅人さんが主演の映画「南極料理人」では、隊員がシェフに内緒でこっそりインスタントラーメンを夜食等で食べ続けた結果、ラーメンの在庫がなくなって隊員たちがとても落ち込んでしまった、というエピソードがありました。
映画では、堺さん演じる料理人が工夫を凝らして何とかラーメンの麺を作り上げ、隊員たち大感激!という内容になっていましたね。
この「ラーメンがなくなった」エピソードを見て、「フフフ・・・全く私たちのケースと同じだわ」と思った亜南極料理人。まずは、ラーメンにまつわるお話を書いてみたいと思います。
いろいろな取材班と仕事をしてきましたが、「ラーメンが嫌い」という方には会ったことがありません。やはり、ラーメンはもはや日本人のソウルフード的存在なのでしょう。
袋インスタントラーメンは、主に「夜間の作業がある時の夜食」「宿泊棟から離れた場所での撮影で、簡易小屋やテント泊となる時の食事用」「調理の時間が取れない日の非常用」として、日本から持参する食材リストにも入れています。
ラーメンは皆さんの大好物なので、出来ればたくさん持ってきたいところですが、荷物の量はかなり神経質にセーブしなければならないので、そうは行きません。
現地でもインスタントラーメンは売っているのですが100%中国・韓国製で、日本人には非常に不評な味な上、輸送費が乗って非常に割高なので使いません。
その時の取材班にもよるのですが、映画のようにこっそり夜食等で食べ続ける方もいて、取材前半に早々にインスタントラーメンがなくなり、皆が一気に落ち込んでしまったということも何度かありました。
やはり、お店もテレビも娯楽もなく、住民もわずか数人、過酷な気象条件下での肉体的にも精神的にも大変な長期取材、となると、「食の楽しみ」というのは1日の中でも非常に大きくなってきます。夜食にラーメンを食べるというのも、抗しがたい誘惑なのでしょう。
亜南極料理人としては、ロケの初めの1週間ほどラーメンの減りに目を光らせ、減りが早いようなら2週間目からは、「フード・ポリス」(冗談で私をそう呼ぶクルーがいました:笑)と化し、食材を厳しく(笑)取り締まることになります。
「日本ではラーメンは殆ど食べないけど、ここに来たらラーメンが食べたくなった」とおっしゃっていたクルーの方がいましたが、人というものは、「いつでも食べられる」となるとそう欲しくないものでも、「ない。限られている」となると、猛烈に欲しくなるものかも知れません。
「ない」となると猛烈に欲しくなるもの・・・お酒もそうかも知れません。
お酒は基本的には「欲しい方は自費で購入」となり、離島に行く前にスーパー等で買ってもらうことになります。娯楽もなく過酷な場所での長期ロケなので、私は経験上、「多めに準備して頂いた方がいいですよ」とアドバイスするのですが、中には「これを機会に断酒しようと思っているので」「撮影で忙しくて飲む暇もないと思うので」、ということで少ししか購入しないクルーもいます。
経験から(笑)かなりしつこく、「島へ行ったらもう手に入りませんよ」「余ったら後日地元の人に安く買い取ってもらうこともできますよ」とアドバイスするのですが、「欲しくても買えない離島」というのが、断酒・あるいは休肝に丁度いい、と思う方も多いようです。
「そうですか・・・わかりました。」
と最終的には笑顔で引き下がる私ですが・・・実は、お酒をめぐる様々なエピソードにも事欠きません。
例えば・・・その時も、やはり前述のようなことで、お酒を少ししか用意していかなかったクルー(仮名:Aさん)がいました。過酷な環境での厳しく大変な取材が続く中で、やはりAさんもストレス解消にご自分が思ったより酒量が増えてしまい、ある日お酒がなくなってしまったようでした。
そんなある夜。
Aさんが、私の部屋に気まずそうな顔をしてやってきました。
「美香子さん・・・実は・・・」
「えっ!?マジですか!?」と私もびっくりしてしまったことがありました。
次回はそのエピソードから始めます(^^)/
]]>さて、前回の続きです。
⑨現地の食材を、現地スーパー・肉屋等に注文・購入(出発3か月前)
これがなかなかに大変です。
各ショップ特に注文カタログがあるわけではありませんし、例えば「ベーコン」といっても、どのブランドのものを店で取り扱っているか、内容量はどのくらいか等もわからないので、「イギリス製・ベーコン」のようにネットでググって、最も出回っている商品を見つけて、その商品名・個数を注文リストに書き、注意書きとして「もしこの商品がなければ、総量で同じような内容量になる、別の代替商品をお願いします」のように書き添えます。
デキる店員に当たると、代替品の手配もスムースで、同程度の量をきちんと手配してもらえるのですが、そうでないと・・・
島に到着して、嘆きの雄たけびをあげることになります(笑)。
例えば、忘れもしない約10年前の「コーンフレーク事件」。
取材班と島に到着する私の最初の仕事は、まずは各商店からの注文品が入った大箱を開封&内容確認して食材整理すること。
箱を開けると、おびただしい量のコーンフレーク。
「あーーー」
希望の商品がなく、代替品を入れてくれたようでしたが、おデキにならない店員が手配したのか・・・その代替品の量は、注文した商品の約5倍・・・日本ではおよそ目にしないような大箱(日本で一般的に売られているサイズのコーンフレークの約5倍量の大箱)が、注文した小箱と同じ数入っていたのです。
「支払いの時に気づかなかったの?」
と皆様思われるかもしれませんが、こうした商品を遠い本国イギリス等から輸入しているフォークランドでは、輸送費や手数料が商品価格にプラスされ物価が非常に高いため、判別が非常に難しいのです。
この時のコーンフレークは、その後のロケ2回でも食べきれず、暫くはあの巨大なコーンフレークの箱が夢に出て来るイキオイでした(汗)。
このように、店員の裁量で実際送られた代替品が極端に多かったり、少なかったりというのは、その後も毎回のように起こるのですが、「あるある法則」が、
「大切な食材に限って少なく、どうでもいい食材が多い」(涙)
代替品の不備については毎回ショップに連絡するのですが、結局返金や交換はある程度迅速に行われなければならないので、何か月も返品できない場合は、結局は泣き寝入りとなってしまいます。
⑩日本から送付した国際宅急便、現地購入した食材の離島への到着を確認(出発1か月前)
日本から送付した国際宅急便の到着・・・何と言ってもこれが一番の懸念事項です。大抵は、日本から首都スタンレーまで3~5週間程度で到着、離島には更にその1~3週間後に到着するのですが、一度荷物が世界中を3か月以上彷徨った後に4か月目に紛失が発覚ということがあり、この時には食材の買いなおしや持って行く手配など、本当に大変でした。
国際宅急便は、オンラインで荷物追跡が出来るのですが、この時は、日本~アメリカ~メキシコ~ブラジル~イギリス~アメリカ~ロシア・・・といった具合に、まさに荷物が世界中を彷徨っていました。荷物がメキシコに行った時点で、D●Lにはクレームを入れ、フォークランドへの唯一の民間フライトはチリからの週一便のフライトのみなので、とにかくチリに運んでほしい旨を伝えたのですが、どうもルートや行き先は完全にコンピューター管理となっているらしく、そういったマニュアル要請はなかなか反映させにくい、とのことでした。
そして荷物がロシアに行った時点で、オンライントラッキングは途絶えてしまったのでした。
この時の経験もあって、日本からの国際宅急便の送付はかなり早めにするようにしています。
⑪青果物・鶏卵などの生鮮食品手配(出発直前)
野菜・果物といった青果物・・・フォークランドでは自家用のちょっとした野菜を家庭菜園で作ることはあれども、産業としての農業はほぼ存在しません。勿論、土壌や気候が農業には全く適していないというのが大きな理由です。
最近は南米等からの供給船も増えたせいか、現地のスーパーでもそんなに古くない(新しいとは言いませんが:笑)様々な種類の青果物を見かけるようになりましたし、数年前に地元ハウス栽培の新鮮な野菜を少量ではあるものの売る店が開店しました。以前はスーパー等で売っている青果物は、萎びていたり変色したりしているのがデフォでした(笑)。
今でも次の供給船が来る直前などに、変色して一見してリンゴとはわからないような(爆)リンゴ等が店頭に並んでいるのも、ごく普通のことです。
そして何と言っても・・・野菜や果物は本当に高い!
きゅうり(サイズは日本より大分大きめですが)1本が400円、キャベツ1個が1000円近くします。
鶏卵もお店で売られているもののは、チリから輸入し、店頭に並ぶ頃には既に産んでから2週間くらい経ったものなので、1~1.5か月間のロケの使用に耐えうるものではありません。
でも、離島の冷蔵庫・冷凍庫が小さく、タンパク源が限られるロケでは、やはりある程度は常温保存できる卵は不可欠!
鶏卵の手配については、何羽もニワトリを飼っている首都スタンレーに住む友人に依頼します。取材班がヘリコプターや船で離島入りする日に合わせて卵を取り置いてもらい、毎回大体100個くらい離島に持参します。そして滞在最初の3週間(それ以降は常温保存では厳しい)の大切なタンパク源となるのです。
青果物の手配については、現地在住の友人に、取材班到着1週間前に先述の地元野菜の店(日曜しか開店しないので、週一の土曜便で到着する取材班に持たせる場合は1週間前の日曜に買うことになる)で開店前に並んで葉物野菜を買ってもらい、葉物以外の野菜はスーパーでよさそうなものを見繕ってもらいます。
離島では冷蔵庫がないので、なるべく日持ちしそうな種類の野菜や果物(玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、りんご等)中心にそろえることになり、葉物野菜等日持ちしない青果物については、滞在最初の1週間ほどで食べきることになります。
このブログシリーズの題名の由来となった映画「南極料理人」、或いは南極越冬隊では、巨大な冷凍庫・冷蔵庫があるので、青果物は冷凍のものをふんだんに持って行くことが出来るものと思われるので、このあたりも「亜南極料理人」の状況はより厳しいものがあるのです。
さて、食材準備編はここまでです。
次回からは、「亜南極料理人」による料理事情や、涙と笑いのエピソードなどについて書いていきたいと思います。
]]>①滞在1.5か月分の献立を作る(出発5か月前)
②イギリス本国からフォークランドへの物資供給船スケジュール、フォークランド首都スタンレーから取材地となる離島への物資供給船スケジュールを確認(出発5か月前)
③取材クルーの人数や年齢等に合わせて、必要食材の種類や量の見積もり(出発5か月前)
④日本で手配する食材リスト、現地で手配する食材リストをそれぞれ作成(出発5か月前)
⑤現地での食材手配開始:現地の食料品店に食材の在庫があるか確認。なければ、イギリス本国から取り寄せてもらう(出発4か月前)
⑥日本での食材手配開始:食材リストを基に、食料品店・通販等で食材購入(出発4か月前)
⑦日本で購入した食材を梱包(出発4か月前)
⑧梱包した食材を国際宅急便で送付(出発4か月前)
⑨現地の食材を、現地スーパー・肉屋等に注文・購入(出発3か月前)
⑩日本から送付したDHL便、現地購入した食材の離島への到着を確認(出発1か月前)
⑪青果物・卵などの生鮮食品手配(出発直前)
というようなものがあります。
「5か月も前から!?」と驚かれるかも知れませんが、例えば、⑧の国際宅急便については、フォークランド到着までに、これまで最短で3週間、平均して1.5か月、最長で…なんと3か月間荷物をトラッキングしても、日本~アメリカ~南米~ヨーロッパ~ロシア・・・と世界中を彷徨った末、4か月目に紛失となったこともあり、かなり前に送付して間違いなく荷物が安着したことを、余裕を持って確認する必要があります。
さらに、1.5か月かけて漸く荷物が首都に到着しても、首都と取材地の離島間を結ぶ船は約1か月に1便しかないので、タイミングが悪いと離島に荷物が到着するのは、日本で荷物を送付してから2.5か月後、ということになります。先述のように4か月後に紛失とわかった場合、また食材を手配して、取材班出発時に持って行かなければなりません。
「取材班が出発時に持って行くって・・・最初からそうすればいいじゃない。」
と思われるかも知れませんが、日本からフォークランドへの道は遠く、途中北アメリカと南米チリで飛行機の乗換えをすることになるので、超過手荷物料金は非常に高くなってしまいます。
そして、それよりも更に厄介なのは、経由地チリでの検疫検査です。同日乗り継ぎが出来ないため、一旦チリに入国しなければならないのですが、畜産農業が主要産業である国チリは、食品の持ち込みに非常に厳しい国。
チリやニュージーランド等に行った経験がある方々なら、あの厳しい検疫検査をご存じの方もいらっしゃると思います。生肉生青果物に限らず、例えば、カップヌードルに入っている乾燥肉、レトルトカレーに入っている加工肉であっても、持ち込みは不可。少量の食料なら隠しようもありますが、税関審査では必ずすべての荷物をX線検査するので、大きな食材箱をいくつも持っているとなると隠しようもなく、良くて食材をすべて開封し、中身の確認説明・・・最悪は没収となってしまいます。
それでは、準備過程について順を追って書いていきたいと思います。
①滞在1.5か月分の献立を作る(出発5か月前)
前回書いたように、滞在先には、日本のビジネスホテル備え付け小型冷蔵庫サイズの冷凍庫が1つ、冷蔵庫が1つしかないので、1.5か月の滞在中に使える生鮮食品の総量は、ビジホの冷蔵庫2つ分ほどに限らなければなりません。大人3~4人、1.5か月分の食材といえば、かなりの量になりますので、食材の9割以上は、常温保存が利く乾燥・缶詰・レトルト等の食品ということになります。
と言っても、滞在は1.5か月、取材という重労働になりますので、何とかタンパク質やビタミンといった栄養素も確保しなければならないので、この献立を立てるのはなかなかに大変です。
②イギリス本国からフォークランドへの物資供給船スケジュール、フォークランド首都スタンレーから取材地となる離島への物資供給船スケジュールを確認(出発5か月前)
最近は首都スタンレーの食料事情も以前と比べれば格段に良くなりましたが、それでも、食料はすべて本国イギリスやチリなどからの輸入に頼っているので、本国からの次の物資供給船到着直前頃には、スーパーの棚が空になったり、在庫がない食材などもかなり出てきます。
現地調達食材については、注文後、あの食材がない、この食材がない、という話になって、必ず本国お取り寄せの必要が出て来るので、供給船のスケジュールを確認してから手配を進めることになります。
特に、主食となるお米については、現地の需要が少ないので、お取り寄せになることがほとんどで要チェックとなります。
③取材クルーの人数や年齢等に合わせて、必要食材の種類や量の見積もり(出発5か月前)
ここが一番苦労する過程かも知れません。
何せ、食べる量は人それぞれ。特に若いスタッフには、底なしの胃袋の人もいるでしょう。
予算も限られているので、食材を余らせて無駄にするのもいけませんが、それ以上に怖いのは、食料が足りなくなること。
通常我々が取材する島は、通常の民間旅客小型機が飛んでおらず、軍のヘリチャーターや船チャーターで現地入りしなければならない特別な離島。ここで食料がなくなったら、取材はおろか、生活もままならなくなります。
献立に合わせて、かなり緻密な計算をして量を見積もっていくことになります。
④日本で手配する食材リスト、現地で手配する食材リストをそれぞれ作成(出発5か月前)
日本で手配する食材のほとんどは、みりん等の調味料、インスタント・乾燥食材、常温保存可能な食材等。それでも長期滞在になりますから、献立にはなるべくバラエティーをもたせ、栄養面も考慮しなければなりません。
そのため、常日頃から、インスタント・乾燥食材などのリサーチは欠かせません。その度に思うのが、
「インスタント・乾燥食材では、日本が世界でナンバー1!」
「もしかしたら、私、日本でも指折りのインスタント食材知識人かも!」
ということです(笑)。取材中に一緒に滞在している世界中から集まる研究者たちも、バラエティー豊かな日本のインスタント食材、特に乾燥野菜には驚嘆しているようです。
現地で手配する食材リスト作成については、メーカー、商品名、個数などをはっきりさせて注文用リストを作成しなければなりません。
商品現物を見られないので、ネット等でイギリスの通販サイトの商品などを参考にしていましたが、2013年にテレ朝の「こんなところに日本人!」の取材の時に出演してくださった日本人のYさんが、2013年前後の約3年、イギリスからの旦那様の転勤に伴いフォークランドに住まわれていて、当時現地のスーパーの商品について詳しく教えてくださったので、それが大きな助けとなったこともありました。
⑤現地での食材手配開始:現地の食料品店に食材の在庫があるか確認。なければ、イギリス本国から取り寄せてもらう(出発4か月前)
前述のようにお米などの食材はお取り寄せになることが多いです。
⑥日本での食材手配開始:食材リストを基に、食料品店・通販等で食材購入(出発4か月前)
⑦日本で購入した食材を梱包(出発4か月前)
⑧梱包した食材を国際宅急便で送付(出発4か月前)
かなりの量になるので、なかなかの重労働になります。
長くなってしまったので、⑨から⑪までは次回にまわしたいと思います。今日の準備過程は特に変わったエピソードもないので、淡々とした堅い内容になりましたが、⑨~⑪については、様々エピソードもありますし、実際料理人生活に入ってからは、さらに汗と涙、驚きのエピソード満載になりますので、次回からに期待して頂ければ嬉しいです。
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